イージス・アショア白紙撤回、河野防衛大臣の英断支持!

イージス・アショア導入を白紙撤回、
河野防衛大臣の英断を支持!

歪んだ対外有償軍事援助(FMS)を見直し
日本独自の防衛力確立を

令和年2年6月20日
主権回復を目指す会代表 西村修平


【世界の政治構造を変えるウイルス感染】

猖獗(しょうけつ)極め未だ収束もおぼつかない武漢ウイルスは、これまでの世界の政治構造と力関係を大幅に変化させている。武漢市発祥の感染は中国共産党が国威をかけて進める「一帯一路」に大きな挫折を与え、全人代すら延期せざるを得なかった。党の威信は傷つき、中華人民共和国は建国以来の国難に遭遇している。

一方、世界の覇権を欲しいままにしてきた米国もウイルス感染で四苦八苦している。厚労省の集計(6月19日)によると武漢ウイルス感染者数は2百18万人を突破、死者数も累計11万8千人超を記録、ベトナム戦争での死者数(5万8千2百人)をはるかに越えた状況で収束の具体的兆候が見えない。世界最強の軍事力を擁する米国でさえ、感染症に為す術がなく、シナ同様、第二次世界大戦以来の国難の渦中にある。

そうした最中で注目する記事が目を引いた。朝日新聞(6月11日)は米軍将校から転じた歴史家のアンドリュー・ベースビッチ(Andrew Bacevich)のインタビューを掲載した。なお、彼はベトナム戦争にも従軍し、ご子息をイラク戦争で亡くされている。「米国『勝者の病』 失った現実見る目」と題した記事で、「コロナ危機は世界をどう変えるか」との問いに、米国にかつての西側世界を先導してきたような国力はないとしたうえで、「もはや世界を指導する唯一無二の国ではなく、ほかの主要国と同列に位置づけられる国」にならざるを得ないと指摘した。

日本がこの情勢認識から日米関係を俯瞰すればどうなのか。「日米安保条約」「日米地位協定」という極めて歪な軍事同盟は、絶対至上の関係ではないとする指摘ともなる。

【対米従属を見直す契機】

この記事に感化された訳ではないと思うが6月15日、河野防衛大臣は陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画の停止を発表した。安全が確保できない他、「『費用対効果』の観点からから合理的でない」がその理由と説明した。さらに政府は19日、具体的に踏み込んで、停止ではなく計画そのものからの「撤退」を表明した。米国依存で進められて来た防衛計画を、米側の反発を視野に日本側の判断で白紙に戻したのであるから画期的である。歪みきった対米関係を是正していく大きな契機になるに違いなく、河野防衛大臣の英断を断固として支持していきたい。

朝日新聞(6月17日)が、米シンクタンク・ランド研究所のジェフリー・ホーナン研究員の「配備停止は日本の安全保障だけではなく、日米関係にとってもダメージだ」と、在日米軍基地と地域の安全に及ぼす悪影響の記事を掲載したのは象徴的である。

【国民の膏血を搾り取る「バイ・アメリカン」】

そもそも、イージス・アショアの配備計画は対北朝鮮ミサイルよりも、米国の対日貿易赤字解消の穴埋めとして、トランプ政権から武器購入圧力が高まり、これに安倍政権が屈した形で決定した。従って「費用対効果」は本より、落下するミサイル破片による地域住民の安全など一顧だにされなかった。配備には導入費として30年間の維持管理費用を含め最低でも5千億円がかかる。しかも、この度のソフト、ハードの改修費用が10年間で二千億円と試算された。

さかのぼる平成17年11月、来日したトランプ大統領は首脳会談で日本側に防衛装備品の売り込みをした。「非常に重要なのは日本が膨大な兵器を追加で買うことだ」と強要、安倍首相はこれに「米国からさらに購入していく」と応えた。この首脳会を受けて、安倍政権は同年12月に配備計画を閣議決定した。これがこの間の経緯であるが、充てられる費用は誰のものでもなく国民の血税に他ならない。「バイ・アメリカン」の名の下で国民の膏血が搾り取られる構図だ。余りの対米従属、屈服に憤りを押さえられない。

【「タブー」に触れた河野防衛大臣】

2019年度、「対外有償軍事援助(FMS)」によって購入する額は7013億円に脹れあがっているが、安倍政権下では年々倍々の上昇、「バイアメリカン」を忠実に実行している。

FMSが増えるとどうなるのか、国民の血税が搾り取られるだけではない。買えば買うほど、我が国の防衛産業が衰退し、防衛産業を支える広範囲にわたる科学技術分野も不毛と化していく。安倍首相が唱える「日米同盟のさらなる強化」は国家を破滅に導くと政策である。

この度の武漢ウイルスが国民経済に与えている打撃は計り知れず、この先の回復も定かでない。国民は疲弊し切っているではないか。我が国は米国の言いなりに兵器の「爆買い」に血税を投入する体力はもはや無い。喫緊の課題は国民経済の再生である。

河野防衛大臣は就任以来、対外有償軍事援助(FMS)による武器購入のあり方に疑念を示していたが、今年に入ってからはより具体的に言及している。今回のイージス・アショアをはじめ無人偵察機グローバルホークや装備品など、「導入ありき」の爆買いの見直し・検討を事務方トップに指示し、その項目は30を超えたとされている。これまで歴任した防衛大臣からしてみればあり得ない判断を下し、実行したのである。ある意味、触れてはならない「タブー」に着手したと言っていい。

【狼狽する防衛族、「費用対効果」の判断を在日米軍基地にも】

河野大臣には、「費用対効果」「住民の安全」を見直しの基準であるとしたら、次には「辺野古埋め立て」「米軍横田基地」など在日米軍基地に関わる問題にまで範囲を広げて頂きたいし、国益の観点から是非ともそうすべきであろう。

しかし案の定というか、対米従属に浸りきった自民党内の防衛族がこれに黙っている訳がない。特に防衛大臣歴任者から、「到底承服できない」(小野寺五典)、「事前説明がないのはなぜか」(稲田朋美)、「何を考えているんだ」(浜田靖一)などなど、白紙撤回に批判と怒りをあらわにしている。国益の観点から、物事を検証して是々非々を問うのではなく、言い分はもっぱらその手続き論に終始している。彼らにしてみれば「晴天の霹靂」、その狼狽ぶりが余りにも滑稽だ。防衛族らが「事前説明」で納得、引き下がるわけがないだろう。河野防衛大臣の独断でしか腐りきった防衛利権にメスを入れることは出来ない。

配備の白紙撤回は米国からすれば衝撃に値するのではないか。これまでの屈服を重ねてきた従属関係の位取りからして、このまま「ハイ、そうですか」と見過ごすわけがない。米国からすれば、日本という植民地における“反乱・独立”に値するからだ。おそらく今後、米国は自民党内の防衛族を操り、直接・間接を問わず様々な手練手管を駆使して撤回の反対を企む筈である。その時こそ、「小異を捨てて大道につく」とする観点から、河野防衛大臣を支持する運動を展開しようではないか。これは我々に課せられた義務である。


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 (酒井信彦 日新報道)

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