「ヘイト」に乗じた新宿区のデモ規制は許されない |
特定集団の圧力に屈するGoogleの動画削除
『共産党宣言』(マルクス・エンゲルス)の序文に倣(なら)えば、今の日本には「妖怪」が徘徊している。それは共産主義ではなく、「ヘイト規制」という得体の知れない妖怪である。
妖怪とは行政によるデモ規制と、Googleによるユーチューブからの動画の削除である。いずれも、「ヘイト規制」に名を借りた言論と表現の自由に対する侵害だ。これら由々しき横暴が蔓延しつつある。すでに、主権回復を目指す会はGoogle日本へ直接の抗議に赴いて、同社に対する追及は継続している最中である。ここに来て、Googleに追随するかのように東京都の新宿区までが、「ヘイト規制」に乗じたデモ規制に乗り出した。
民主主義を支える根幹は言うまでもなく言論と表現の自由である。独裁国家のシナ、北朝鮮を例外にしてこの「言論と表現の自由」は洋の東西を越えてた共通の価値観である。日本国憲法 第21条をあからさまに侵害する横暴と認識すべきだ。
東京都新宿区はこの7月に、街頭デモの出発点として使用を認める区立公園をこれまでの4カ所から1カ所に限定することを決めた。同区内で行われたデモは昨年で77件あった。その内60件は今後使えなくなる3カ所の公園が使用されている。デモがしにくくなるのは明らか、つまり相当な規模で規制されるのは畢竟(ひっきょう)である。
朝日新聞の報道では、これらの措置は区役所内部だけでの検討だという。区の公共施設は区民の共有財産である。条例に則(のっと)るのであれば誰でも申請して使用できる。その条例は議会で採択される専権事項であり、区役所内部で一部の不特定の職員が決定できる次元のものではない。
吉住健一区長は朝日新聞の取材に対し、ヘイトスピーチ対策に重点を置いたと説明している。さらに区幹部は、「ヘイト(デモ)のほかに大人数でシュプレヒコールを挙げるデモもあり、こうした状況を勘案した」「(近所の公園に)知らない人がかなり集まるのは住民にとってかなりいやな状況だ」などと、住民の生活環境を守ることを理由として議会へ説明している。
個別のデモ申請の中身を審査するのではなく、デモ全般に対する一律の規制であるのは間違いなく、「集会、表現、言論の自由」を侵害する独断である。日本国憲法の全てを肯定するわけではないが、現憲法が明記する「集会、表現、言論の自由」は国家、民族、肌の色を問わず民主主義を支える共通の価値理念である。新宿区の独断は日本国憲法を否定した横暴と断定して良い。
筆者はこの6月、渋谷区の公園課へデモ申請に出向いた。これまでたびたび使用していたデモ出発地点として「神宮通公園」を使用するためである。最初、窓口で対応した職員は「現在、渋谷区はデモ出発地点として公園の使用を許可していない」とけんもほろろな対応に出た。
到底納得できないので、ならば、公園の使用を不許可とする条例を文書で見せるよう要求。若い職員は戸棚を空けて右往左往、その様子を見ていた中堅幹部が堪りかねて代わりに対応に出た。彼は条例文など存在しないと居直り、不許可は公園課の「内規」であると説明した。
中堅幹部が話した「内規」とは、デモ騒音など周辺住民からの苦情に応え、周辺の環境維持のためと説明した。しかしながら、「公園という公共物の使用の可否を、議会の承認を経ないまま公園課が独自の『内規』で決定することなど通用するわけはない」と追求。端(はな)から申請すら拒否する公園課の横暴を窓口で厳しく批判した。
あくまで、公園使用の申請相手は区長、使用の可否を最終的に判断するのも区長、断じて公園課の「内規」ではないと、中堅幹部の言い分を一蹴した。後日、公園課から「デモ申請について許可の方向で対応する」との連絡は届いた。
以上のように渋谷区も、新宿区に並んで突出した形でヘイトに名を借りた「デモ規制」に乗り出している。地方の行政単位では同じ方向に向かっているのは間違いないであろう。我々のデモまで、ヘイト集団と十把一絡(じっぱひとからげ)にする規制であり、断じて許されない。
Googleの有無を言わせぬ動画の削除と並んで、行政の「デモ規制」を言論への無差別テロとして捉え、「小異を捨てて大同へ」の下、思想信条の枠を越えた形で「デモ規制」を許さないとする戦いが求められている。
◆参考 【抗議文】「許せない!Googleの言論弾圧と横暴を」(平成30年7月6日) http://nipponism.net/wordpress/?p=35962 【絶対に許すな!一方的グーグルの根拠なき動画削除を】(平成22年6月21日) http://shukenkaifuku.com/past/KoudouKatudou/2010/100621.html |
YouTubeは2018年5月18日から7月16日までの約2か月で、YouTubeから310,675本以上の動画を削除し、328のチャンネルも閉鎖した。
仕掛けは『ネトウヨ春・夏のBAN祭り』と称した匿名のネット集団が意に反する動画に対して、集団で意図的・計画的にYouTubに「削除」要請するのである。短期間で31万本以上の「ヘイトスピーチ」に関する動画が、YouTubeから削除されたのだ。
YouTubeは動画の削除を「ヘイトスピーチ」に対する規制だと称していて、同様な動きはオーストラリア、フランス、ドイツでも行われている。「ヘイト規制」と称した言論と表現の自由に対する無差別テロと断ずる。しかも、ネット上の得体の知れない集団に媚びて片っ端からの削除に応じた。何たる横暴であろうか。
『ネトウヨ春・夏のBAN祭り』、自らの意に反する相手方の言論を封じ込めるための実体なきネット上の「妖怪」だ。Googleはその得体の知れず、実体なき集団に屈服し、「言論表現の自由」を破壊している。
◀︎『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』 (酒井信彦 日新報道) 著者・酒井信彦が朝日新聞に踊らされる日本人の精神構造を解く。 |